Chic Chicks *Salon de The

- 小さな旅 -

仕事で出かけてちょっと寄り道をした時のことを綴ってみました

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 癒しの空間

モンテカティーニ・テルメ(イタリア)

  

以前より機会があったら訪れてみたいと思っていたモンテカティーニ・テルメ。フィレンツェから程近いイタリアの温泉です。
いつもは、景色も楽しみたい、芸術も楽しみたい、あれもこれもと欲張ってゆっくりのんびりとだけ過ごす場所はついつい後回しになっていました。そこに、この夏はゆっくりのんびりを求めて訪ねてみることにしました。ここはフェリーニの「8 2/1」の舞台にもなっています。映画では肝臓を悪くした主人公のマルチェロ・マストロヤンニがドクターに湯治を勧められ優雅な建物の中で温泉水を飲んでいました。ローマ時代に発見され、中世には王侯貴族の保養地であったというところ・・・。1773年開業とあります。
冷房のないフィレンツェ始発のローカル列車で約50分、モンテカティーニ中央駅に降り立ちました。ホームが一つだけの単線駅でした。

フィレンツェからちょっと離れただけでこの空気、この開放的な空間。まずは大きく深呼吸。この地を愛したというヴェルディの名を付けたメイン通りにはラヴェンダーが植えられ、風に乗ってその香りが運ばれてきます。トスカーナの丘に囲まれたモンテカティーニはまさに癒しの空間でした。
保養地区の中心に大きく広がる緑の公園内に点在する8つのテルメにはそれぞれ効能の違った温泉が涌き出ており、イタリアはもとよりヨーロッパ各地からの湯治客がドクターの処方箋に従っての温泉治療に訪れます。そのせいでしょうか、日中はほとんど人を見かけることがなく静まりかえっています。そして日が落ちてからはそれまでどこにいたのかカッフェやリストランテ、イルミネーションのきれいな回転木馬に大勢の人々が出てきて楽しんでいます。今までに見てきた観光地とは違った空気と時間が流れているかのようでした。
本格的な治療ではなく旅の疲れを取りに来た私の初日は温泉プールでリラックス。水中の浮遊感はこんなに気持ちの良いものだったのですね。久しぶりに思い出しました。

モンテカティーニ山へのケーブルカーがあるのを知り、翌朝出かけてみました。30分に1本の可愛い真赤なケーブルカーはまるで遊園地の乗り物のようでした。
頂上まで運んでもらうとそこにはまるでおとぎ話に紛れ込んだような小さな中世の村がありました。石畳の坂道を登ると小さな広場が。村の中心のようです。犬や猫が日向ぼっこをしているカッフェとリストランテのパラソルを抜けて左にちょっと行くと小さな教会と城址らしきところがありました。そこが山の左端です。再び広場に戻って右へ行くと古い時計台のある別の教会が反対端でした。全長1kmにも満たない小さな小さな村でした。見晴らしの良い塀に腰掛けて景色を見渡すと青い空に白い雲、トスカーナのなだらかな丘に緑のオリーブや葡萄の畑。時折抜ける風が心地良い。大好きなイタリア中部の田園風景です。

ゴトゴトと再びケーブルカーで山から下って、長いお昼休みのあとテルメ・テットゥッチオへ行ってみました。唯一観光客が見学だけできるテルメです。巨大な円形ドームにコリント式円柱、花の咲き乱れる手入れの行き届いた広大な庭にプールのような噴水、石の彫刻、古代ローマ時代の贅を尽くした浴場のイメージそのもの。なんと優雅なのでしょう。
湯治客は奥の施設でプログラムに従ったケアを受けるようですが観光客はエントランスからホールまでしか入れません。エントランス脇の小さな受付でにジョッキグラスを借ります。これで温泉水を試飲することができます。蛇口から汲んで少しだけなめてみました。ほんのり塩分を感じました。

いよいよ本格的なエステティックを受けられるテルメ・エクセシオールへ。いつもながらの興味と行動力に誘われてここまで来たもののシステムも何を受けたらよいかもわかりません。
当惑しているとレセプショニストとイタリア語で会話をしている日本人らしき女性がいらっしゃいます。思い切って話しかけてみました。日本とイタリアを仕事で行き来しているというその方は、ここは泥のエステがおすすめと教えてくださいました。この地で唯一お見かけした日本の方にこんなタイミングでアドバイスをいただけるなんてラッキーでした。

イタリアで初挑戦の温泉エステは「Beauty Spa Taste」というコースにしてみました。ここにはおすすめいただいた鉱泉泥のフェイシャルも入って約2時間のコースです。
リストに書かれていた「Thermal Oasis」とはサウナのことでした。日本とは様子がやや違い、特に水風呂は小さな円形噴水程度のもので中央にしきりがありました。その半円内に一人づつがひざを抱えて浅く浸かるようです。30分程すると迎えが来て別の部屋に通されました。
「Spa Hydromassage」温泉水のジェットバスです。その心地良さに瞼が重くなりバスタブに浮かんでいると女性担当者の大声で我にかえりました。見るとお湯がすっかり溢れて床が池になっていました。新人の彼女の操作ミスでした。ため息をつきながらモップで水を吸い取る彼女が気の毒になり思わず手伝いそうになりましたが、にこにこと微笑みながら大きなバスタオルで包んでくれて傍らのベッドでくつろいでいるよう言われました。あのバスタオルは暖かくて気持ちが良かったな。次の担当者に呼ばれて通された小部屋では「Paleomarine Mud Facial」。これがおすすめの泥のフェイシャルです。オイルマッサージの後、暖かい泥で顔が覆われました。パックを浸透させている間のまどろみは至福の時でした。照明を落した部屋のBGMはボサノヴァ。音がなくなると木々の小鳥のさえずりが聞こえてきます。ここが地上であることを忘れそうでした。自分のためにこういう静かな時間を作ってあげることも必要だと痛感しました。

鉱泉泥の効果でしっとりつるつるになり、昼間に見つけていたシーフードのリストランテへディナーに出かけました。日の長いイタリアの夏の夕暮れ時、優しい涼風に撫でられながらテラス席でいただくワインと食事は期待どおりでした。とても美味しく、一層幸せな気持ちになりました。冬に来たらここで牡蠣をいただきたいと思いました。

ブリュッセル、パリの仕事を終えて訪ねてきたモンテカティーニでの2泊3日。すっかり生き返りました。ゆっくりのんびりの滞在も良いものです。
フィレンツェに戻る列車の中、気持ちはそこでの仕事に向けてあらたになってゆきました。

(Jun.30.'06記)

■追記
この旅から約半年後、この時テルメで出会った日本の方、江原惠美さんは長年日伊間の文化交流のお仕事をされており、モンテカティーニ・テルメの日本窓口「テルマーレ」の運営者でもあられたことを偶然から知ることになりました。
「テルマーレ」のサイトではこの温泉の歴史や効用、現地の美味しいレストラン(これも偶然私の見つけたレストランでした)等の紹介をされていますのでどうぞご参考までに。また、現地でのエステ、各種プログラムのアレンジ等もしてくださるそうです。
"TelmaLe(テルマーレ)"

● バックナンバー ●
光と影の島(ヴェネツィア - イタリア)(Aug.16.'05)
緑のハート(スポレート - イタリア)(Jul.30.'04)
万華鏡の空(ローマ - イタリア)(Jan.21.'04)
聖人と小鳥たちの丘(アッシジ - イタリア)(Jul.28.'03)
静かなる湖畔のひととき(トラジメーノ湖 - イタリア)(Jun.26.'03)
中世へのタイムトリップ(シエナ - イタリア)(Jun.18.'01)

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