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仕事で出かけてちょっと寄り道をした時のことを綴ってみました
<アッシジ(イタリア)>
ウンブリア平野にぽっかりと浮かぶ丘、そこが自然と平和を愛した聖人フランチェスコの町、アッシジです。 駅前の木にとまった鳥たちのにぎやかな声がアッシジの第一印象でした。なんて鳥の多い町なんでしょう。 12世紀にこの町で生まれたフランチェスコ、クリスチャンではない私ですが自由と厳格が表裏一体の共存を感じさせる彼の生き方には興味と憧憬を持ってやみません。加えて、同じフランチェスコ会の教会フィレンツェのサンタ・クローチェ、ここに足を踏み入れると毎回感じる深い安心感。それらのルーツを確かめてみたくなりこの丘を訪ねてみることにしました。 全長1kmほどの旧い町は空に近いからでしょうか、ツバメやスズメなど鳥をたくさん見かけます。小鳥にお説教をしたというフランチェスコの逸話も真実味を帯びてきます。 スバシオ山のバラ色の石で造られた聖フランチェスコ大聖堂では知人の紹介で神父さまに案内をしていただきました。ルネッサンス絵画のさきがけであったジョット、チマブイエ、ロレンツェッティ、シモーネ・マルティーニ、、、見ごたえのあるフレスコ画で壁が埋めつくされています。それは見事でした。上部聖堂、夜空の天井の一部に唯一97年の地震の傷跡を感じました。 あれから1年、今回はウンブリア平野を包む夜のとばりと澄み渡った朝の空気の中に溶け込んでみることも楽しみにしています。 見覚えのある駅を出て今回最初に出会ったのは小鳥ではなく加古川からという一人旅の若い女性。夢を追いかけてナポリへ行く途中のアッシジ観光とのことでした。一緒に取ることにした夕食の席で目を輝かせながら夢の話を聞かせてくれました。大人の目からはちょっと危なっかしさもありましたが希望にあふれた彼女の話は大空に飛び立たとうとする小鳥を連想させました。 東の門から勾配のきつい坂を下って約1.5km、ぽつんとたたずむ慎ましやかな修道院、そこがサン・ダミアーノでした。フランチェスコの精神を大切に守って生きたキアラをそのまま反映するような。やっぱり訪れる価値はありました。想像していたとおりでした。キアラもこの窓からこの風景を眺めたのでしょうか、このドアノブを握ったのでしょうか、その時彼女は何を思っていたのでしょうか、激怒していた貴族の父上のこと?病の床についたというフランチェスコのこと?想像は時を超えて広がります。 サンタ・マリア・デリ・アンジェリ教会へは巡回バスに乗って下りました。ポルチウンクラとフランチェスコが永遠の眠りについた部屋にしばらく立ち寄ってからロゼートへ。花の時期はつい最近終わってしまったようですが葉やシュートは活き活きとしていました。ガラス越しにじっと見てみましたがやはり棘はありませんでした。 アッシジの夜、神父さまにお誘いいただき他2人の神父さまと4人でサンタ・キアラ教会前広場からの夜景を見に出かけました。途中ごちそうしていただいたジェラートを食べながらの夕涼みです。3人の神父さまは皆さん私服でしたので一見すると全員観光客(?)。さすがに長い神父さまは例え私服でも町の人々にはわかっていましたけれど。暑い夏の夜、町には大勢の人々が出ていました。 アッシジの朝は静かに明けました。まだ観光客のいない大聖堂へ出かけました。早朝6時、フラテ(修道士)たちの朝のお祈りが始まっていました。私は前回に訪れた時からの安らぎの場所、地下礼拝堂で心静かなひとときを過ごしました。 旅の最後、神父さまにフランチェスコが瞑想をしたというカルチェリに連れて行っていただきました。カルチェリまでは山を上りちょっと距離があります。1人では行けないと思っていたので感激でした。今でも周囲は自然のままです。当時はここまで登ってくるだけでも容易ではなかったことと想像できます。糸杉林が深くなり、アッシジよりもさらに高く涼しいせいか蝉は鳴いていませんでした。自然を賛美したフランチェスコにとってはここは鍛錬の場でもあり、反面憩いの場でもあったのかもしれません。各フラテたちが瞑想をした洞窟がそのまま残っていました。神父さまに白い鳩の逸話やエリア会士のお話などを聞かせていただきました。 次回のお楽しみも用意してくださるとおっしゃった神父さまにお別れを告げて仕事の待つフィレンツェへ戻ります。アッシジで出会う出来事はいつも革表紙の本に綴られた物語のよう。不思議な町です。 (Jul.28.'03記)
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