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      昨今、足に合わない靴を履いて育った子どもたちの弊害についての記事が、テレビや新聞、雑誌で目につくようになりました。 
     体に合わない洋服で病気になることはありませんが、足に合わない靴で病気になることはあります。それだけにとても慎重に選んであげなければなりません。 
     
    日本における革製子ども靴の歴史を調べてみると、たかだか100年程度のものでした。それも最初は、ごくごく限られた階層のお子様たちのもので、庶民の主流は大人も子どもも下駄か草履でした。 
     日本で初めての子ども靴専門店が、昭和10年にオープンした銀座の「ヨシノヤ婦人子供靴店」。この頃もまだ一部の子供たちの贅沢品だったことが想像できます。 
     生活必需品としての革製子供靴が普及したのは戦後、昭和30年代になってからのようです。 となると実質はまだ50年の歴史もないということになります。 
一足一足丹精をこめて作られていた贅沢品時代から生活必需品(消耗品)時代へ時が流れると、その需要に伴いオートメーションによる画一的な大量生産へと変わっていったようです。
       その数百年も前から靴を履き、ましてやベッドとお風呂の中以外靴を履いている欧米と比較すると、日本では作る側も履かせる側もまだ意識が低いのは仕方がないのかもしれませんが、冒頭でもお話しましたように、靴選びの大切なところは、足に合わない靴で姿勢が悪くなったり、病気になることがあるということです。 
     昭和40年代初めに、「すぐに足は大きくなるからと言ってブカブカのものや、キュウクツなものを我慢させて履かせるのは、足の骨格を変形させたり、発育を妨げてしまう。またとっさの身のこなしができずに事故の原因にもなりかねない。」と既に注意を促していたのを知りました。同時に「天然皮革は通気性があるので大人よりも多汗性の子供の足をムレや水虫などの皮膚病から守る。」と医学的、人間工学的見地からのコメントが出ていたのです。元来、靴は足を保護するものですから、ファッション性だけにとらわれず、そのあたりも考えて作られた靴を子どもたちに見つけてあげたいものです。 
     
    靴の歴史の浅い日本では、そう思っても本当に良い子ども靴にはなかなかお目にかかれませんし、「子ども靴はすぐに成長するので消耗品、もったいないから安い靴で良い。」または、「あまり足には合わないようだけど可愛いから。大きめにしておけば大丈夫でしょう。」というのが履かせる側の現状ではないでしょうか? 
Chic Chicks でもオーダー靴をお作りになるお子様方の足を計測させていただいていますが、足に合わない靴を我慢して履いていらっしゃるお子様は意外に大勢いらっしゃいます。靴を足に合わせているのではなく、足を靴に合わせているということです。
     まずは履かせる側から意識を変えて良い子ども靴を求めれば、作る側もそれに応えてくれるのではないかと思います。事実、子ども靴売り場に、足の健康を考えたドイツの子ども靴が並びシューフィッターのいるデバートや靴屋さんが増え始めていますから。 
     子どもの足を守ってあげるのも私たち親の役目ではないでしょうか?  
    (Apr. 8.'00) 
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